御用報道が日本を滅ぼす

 相変わらず自民党総裁選挙報道が洪水のようにあふれている。衆議院議員の任期満了まで1ヶ月、ということは衆議院総選挙がまもなくということだ。その時期に、自民党ばかりテレビや新聞で露出させるとは、偏向そのものではないか。中立公正、不偏不党の立場で報道しなければならないはずの報道機関が、自民党応援団と堕している。

 安倍・菅政権の9年間の功罪を客観的かつ公正に検証し、きたるべき総選挙での国民の審判材料を提供するのが報道機関の使命だろう。それが、菅後継首相を選ぶことになるからという、ただそれだけの理由で皮相な報道に大騒ぎしているのは、報道機関の堕落としか言いようがない。野党の政策提言や臨時国会開催要求などは、取り上げたとしてもほんの付け足し程度の報道に終始している。そして、弱い野党、頼りにならない野党を印象づけるためか、9年も前の民主党政権時代の悪口をコメンテーターなどに言わせている。案の定、自民党の支持率が回復傾向だ。ここまで、自民党を利する報道をやるのは、なぜなのか。やはり、報道機関幹部が、政権トップとの会食やゴルフを繰り返し、妙な一体感を感じ、政権に忖度することが身の習いになってしまっているからではないのか。

 この9年間で日本は世界から本当に遅れてしまった。伸びない国内総生産国民所得、広がる貧困と格差、医療介護社会保障公衆衛生の脆弱化、高すぎる学費、ジェンダーギャップ120位、貧困な気候変動対策、コロナ陽性でも「原則自宅放置」という医療崩壊、これらをもたらした悪夢のような9年間だった。憲法の示す個人の尊厳を破壊する施策のオンパレードだった。つまり、憲法を敵視し改憲を目指す、憲法違反の政治だった。

 この深刻な状態をもたらした一因は、明らかに報道機関の報道にある。政権に不都合なことを意図的に矮小化し、隠すことをやっている。人事で支配された官僚が、公文書の隠蔽改ざんなどの不正行為を強要されているだけでなく、報道機関が報道すべき事こと報道せず、報道すべきでないことを報道すれば、国民は目隠しされた状態となり、判断に狂いが出てくるのは当然だ。そして、何をやっても政権側が選挙で勝利し、不正腐敗と諦めが深刻化し、改めるべきことが改められず、日本が沈没してしまうのである。

 この閉塞状況を打破しなければならない。選挙に行かなかった人たちが選挙に行って投票率を上げよう。そんな気になる気運を高めよう。今朝の毎日新聞世論調査によれば、自民党の支持率と支持政党なしの人の割合はほぼ同じの37%。この支持政党なしの人たちが関心を持ち、投票に行くことになれば、固定支持層だけで選挙結果が左右されることはなくなる。幸い、市民がSNSを活用することはできる。市民が一人一人が現状に対して感じること、疑問なこと、考えたことなどを発信し、どうせ変わらないと諦めたり、無関心だった人たちに語りかけよう。つぶやこう。ブログに書こう。投稿しよう。そんな地道な行動を私もささやかながら続けていきたいと思う。