これでいいのか 五輪の次は自民党総裁選報道の洪水 

 自民党総裁選が昨日告示された。菅首相の退陣表明以降、マスコミは誰が立候補するのか、どんな人物なのか、表面的な報道に終始している。ゴールデンタイムに無批判に生出演させて、言いたい放題を許している。衆議院選挙を目前に、自民党ばかり露出させて、まるで自民党広報番組と化している。このマスコミの堕落を堕落と言わずして何というのだろう。権力者への迎合、追従、おべっかが習いとなってしまい、羞恥心をなくしてしまったかのように見える。以前から指摘されていることだが、報道各社の社長や主幹が、首相や政権党幹部と会食を繰り返していたし、今も続いている。そんな光景を見せつけられている社員が、政権に不都合な事実を暴く批判的な報道ができるはずがない。ごく一部に気骨のある報道も見られるが、残念ながら稀有といってよい。

 案の定、自民党の支持率はやや回復し、野党の支持率は上がらない。立憲民主党共産党社民党、れいわ新選組の4党と市民連合の政策合意は、今までの自公政権の政策を根本的に転換させることのできる画期的な内容だと思うが、ほとんど報道されないのはどうしてか。明らかに意図的に無視していると言わざるを得ない。

 安倍・菅政権の9年間で、日本は相当ボロボロになった。何よりも立憲主義の破壊、憲法違反のオンパレード。株価だけが上がり賃金は低迷、広がる貧困と格差。国民一人あたりのGDPは2020年度には23位に転落。人事支配による官僚の任務遂行の公正さ破壊。コロナで明らかになった保健所や医療など公衆衛生の脆弱性。公務労働者の削減がもたらしたコロナ対応のお粗末さ。電通パソナなど中抜き業者の跋扈。官民問わないモラルハザード原発固執するエネルギー政策。気候温暖化への無策。北朝鮮拉致被害者の帰国がまったく進展しない。中国の海洋進出への軍事一辺倒姿勢。選択的夫婦別姓制度への後ろ向き。消費税を5%から10%に増税しておきながら、後退する一方の医療・介護・社会保障。このように失政・悪政・苛政は枚挙にいとまがない。突っ込み材料満載なのに、そこには触れず、表面的な候補者報道に終始している。

 国民世論の健全な形成と政治判断に反するこのような報道は、一刻も早く改めないといけない。自分たちの権力迎合報道が、ここまで日本をボロボロにしたことの一因であることへの反省をすべきだ。自分たちの報道責任にほおかむりしたまま、平気で野党をおとしめる報道をしてきたことを猛省すべきだ。社会の木鐸、第4の権力とも言われるジャーナリズムの基本に立ち返ってもらいたいと切に願う。