弱ければ、いじめていいのが自民党

 自民党副総裁の麻生太郎氏が7月4日、千葉県市川市の街頭演説で、ロシアのウクライナ侵攻に触れた上で「子どもの時にいじめられたのはどんな子だったか。弱いのがいじめられる。強いやつはいじめられない。国も同じだ」と述べた。麻生氏は「強そうな国には仕掛けてこない。何発かやり返されると思ったらいじめられない。子どもの時の記憶を思い出してください」とも強調した。(毎日新聞2022年7月5日)

 いかにも麻生氏の言いそうなことだ。だが、2度に渡る世界大戦を経て、軍事力で問題を解決しようとすることは、悲惨な結果しか残さないから、国連のような組織による集団安全保障(「集団的自衛権の行使」ではない)が大切であることを学んだ人類の叡智を、消し去る暴論だと思う。なぜなら、ロシアのプーチン氏や北朝鮮金正恩氏、中国の習近平氏の行っている戦争や軍拡を肯定することになるからだ。麻生氏の論理が正しいとすれば、世界中の国が相手に侮られない軍事力を備えないと自国の安全は保てないということになる。自国がそうしていいのなら、相手国もそうしていいことになる。これは、果てしない軍拡競争になる。コロナ一つ克服できない世界が、気候変動の危機に対処できない世界が、貧困と飢餓を克服できていない世界が、軍拡競争にいそしむなんて、悪夢と言うほかない。

 考え方や体制がちがっても、みんな仲良くしようぜ、戦争だけはやめようよ、という方向に持っていくのが、政治家のつとめではないだろうか。物価が高騰しているのに、賃金上がらず年金は下げる日本。やるべきことをやらず、軍拡をやっている場合ではない。軍事に頼らず戦争を起こさせないための努力を最優先してもらいたい。

 いじめられる子が悪いとのメッセージにもなっていて、児童生徒への悪い影響が心配だ。