維新は野党?

 維新の参院比例の選挙政策を見てみた。見出しは「改革。そして成長。」「改革なくして成長なし」とも。自民党ではなく日本を壊した小泉改革のときと同じスローガン。やはり新自由主義を信奉していることが見出しだけ見ても感じ取れる。

 小泉改革で非正規雇用が爆発的に増加し、貧困と格差は拡大した。小泉改革をはさむこの25年間、賃金は上がっていないが、日本型雇用が破壊されたことに原因がある。終身雇用、年功序列、企業内組合が日本型雇用の特徴だが、その雇用の時に経済が高度に成長して、所得も増え、一億総中流といわれる状況が生まれた。円も80円近くの値をつけたこともあった。ところが、1995年の日経連の『新時代の日本的経営』で、雇用の流動化政策が本格化し、非正規雇用が今や労働者の4割を占めるに至った。当然平均賃金を引き下げる重しとなり、賃金が上がらない国になってしまった。正社員も過労死するまでこき使われ、自殺に追い込まれる人も出てきてしまった。年収200万円以下のワーキングプアが増加し、若者は結婚したくても経済的にそれが望めなくさせられた。少子化の大きな要因である。これを根本から改めるには、労働者の権利の保護に政策を切り替えないといけないが、維新の政策にはそれがない。それどころか、「改革なくして成長なし」なのだから、いっそうの雇用流動化や民営化を促進しようとしているのが本音だろう。つまり、日本を停滞させてきた原因である「改革」の徹底を叫んでいるわけだから、さらに地獄に引き込まれることになるだろう。そうなれば、ピンハネで潤う派遣会社経営者や不動産売買、株式投資で儲けた人たちは、万々歳だろうが。

 それを巧みにカモフラージュするのが、「身を切る改革」だ。「議員特権に固執する古い政治家にノー」といって、改革の旗手をアピールしている。しかし、彼らのやっていることは、議員報酬の削減や定数削減だが、維新の議員や首長はお金持ちや経営者が多い。だから彼ら自身は困らないし、生活困窮者には自分たちのために身を切ってくれているかのような錯覚を与える。しかし、共産党を除く全政党にトータルで320億円支給される政党助成金は満額受け取り、廃止することは断固として拒否している。余ってもあの手この手で返還を逃れてため込んでいる。この一事を見ても、報酬や退職金の減額は、カモフラージュに過ぎないことが分かる。定数削減も、多数党に有利で、議会の多様性を排除する少数意見の切り捨てにすぎない。保健所を減らしすぎコロナ在宅死日本一の大阪府・市で、議会でのその責任追及の声が弱いのは、議員定数の削減、多数党に有利な1人区が多いことが、その要因だ。

 ロシアのウクライナ侵略に乗じて、「積極防衛能力」を整備するそうだ。核共有についてタブーなく議論すべだそうだ。一時、GDP比にこだわらず防衛費を増加させるべきだとも主張していた。自民党が2%だから、それ以上の主張だった。憲法が許す範囲の「専守防衛」をやめたら、相手国がどう思うのか、想像がつかないのだろうか。軍事力対軍事力の悪循環を引き起こし、かえって緊張を高めるだろう。また、増税社会保障費の削減で国民生活はいっそう疲弊するだろう。そんなことより、維新も掲げる教育無償化や出産無償化、大胆な減税をしたほうが国民は助かる。しかし、軍事に前のめりだから、本音は社会保障などは二の次なのだろう。社会保障については、「抜本改革。持続可能なセーフティネットを構築」と記しているので、自公の年金カット法に維新も賛成したように、「持続可能」を口実に水準を切り下げるというのが本音なのだろう。

 以上見てきたように、維新の政策は巧妙にカモフラージュされているが、自民党より右の、新自由主義徹底政策が柱になっていると考えざるを得ない。政府予算案には反対しているから野党のように見えるが、自民党をビリッとさせるという党首の発言や、改憲発議のスケジュール化をけしかけたりと、自民党を右に引っ張る機関車役・突撃隊だといえる。今回の参院選で維新が勝つと、日本がさらに右寄りにふれる危険性が高いといえる。国民はどう判断を下すのだろうか。