野党共闘は、駒落ち将棋の心構えで

 野党共闘への否定的評価による攻撃がすさまじい。野党が一本化した選挙区で、自民党の閣僚経験者や大物が落選したのだから、すごい効果があったということだ。しかし、立憲民主党が改選議席を減らしたことで動揺していることを幸いと、否定的評価をこれでもかと繰り返し、野党の分断を策している。これに乗せられていけないことは明らかだろう。そして、野党共闘で足りなかったところ、不十分なところを点検分析し、反省すべきところは反省して改善していけばいいのである。

 ところで、野党共闘を取り巻く環境は厳しい。将棋の駒落ち将棋のようなものだ。飛車や角といった大駒を抜いて、すべての駒がそろった相手と指す将棋が駒落ち将棋だ。まず与党側は政権を握っているから、それだけで強い。予算配分をちらつかせ、関係業界や業者に支援を要請できる。与党議員に汚職が多くなる所以である。有能な議員候補者供給源としての官僚も、与党の味方にさせやすい。また、長期政権による官僚支配による行政の私物化が極まり、悪事を重ねても訴追されない事例が少なからず生まれている。そしてこれが悪影響を放っているのだが、昨今のマスメディア支配。特にテレビ番組に出ているコメンテーターなどは、与党や維新贔屓の人が多すぎる。室井佑月さんなどは、野党候補の配偶者になったら降板したが、維新の元首長は大きな顔をして出演しまくっている。自民党の批判をしているように見せかけて、野党を貶める発言が多い。一番ひどかったのは、菅さんの後継総裁選の垂れ流し報道。4人の候補者を朝から晩まで約1ヶ月間、出演させまくったのだから、自民党広報機関と化していた。これに影響されない方がおかしい。政治的中立はどこに行ったのか。官房機密費のおこぼれでももらい、そんな報道しかできないようになってしまったのだろうかと勘ぐりたくもなる。それに対して、市民と4野党の合意した政策や政権協力のあり方については、お愛想程度の報道だった。

 つまり、野党共闘をめぐる環境は、これほど劣悪なのである。飛車や角と言った大駒を抜かれ、香車や桂馬と言った芸達者な駒も少ない。持ち駒も少ない。野党の政策や魅力を伝えてくれる報道機関はないに等しい。野党だから、当然権力も持っていない。そんな中で、国民に支持を訴えて広げていかないといけないわけである。しかし、駒落ち将棋でも勝つことはできる。それは、野党の持っている知恵と団結と誠実さの発揮ができるかどうかにかかっている。まずは、憲法を守るまっとうな政治を取り戻すという国民への誠実さ愚直さを示すこと。憲法違反を平気で行ってきた自公政権に危機感を持っている人は多い。その人たちに野党の誠実さの希望を灯すこと。ルールを守らない政治ほど危ないことはない。そして、コロナ禍で苦しんでいるすべての国民に寄り添う政治を行うと約束すること。それを日々の行動で示すこと。野党4党と市民の力を合わせれば、権力を持たなくても政治は動かせるし、その経験が市民の政治参加を広げることになる。さらに、共産党と組むなという反共攻撃に怯まないで、団結を固めること。天皇の制度を含む憲法の全条項を守ると言っている共産党は、信頼できる政党だ。また、ソ連や中国のような独裁国家を痛烈に批判して、自由と民主主義を大切に守り発展させると約束している政党でもある。ホームページにアクセスして綱領と規約を読めば一目瞭然だ。市民と4党の政策合意をさらに発展させ、国民へのアピールを工夫してその魅力を伝えていけば、きっと国民に届いていくだろう。そして、マスコミも野党共闘をもっと取り上げなければならない状況にしていけば、諦めていた人たちの気持ちも変わり投票率も上がり、政権交代へとつながって行くであろう。これは、辛抱強い戦いである。お金も権力も持たない我々は、焦らず地道にコツコツ努力していくしかない。誠実さと団結と知恵を力として。分断されてはならない。